WEB会議による模擬裁判に参加しました

先日、和歌山の裁判所において、WEB会議による模擬裁判が実施され、当事務所も代理人弁護士の役割で参加いたしました。
実際の流れとしては

①架空の事件(土地明渡し請求)について、既に民事裁判が起っているという設定

②この裁判について、あらかじめ決まった日時で、裁判所と原告代理人役、被告代理人役の弁護士事務所を、インターネットを利用したビデオ会議システムで接続(特定のソフトウェアを利用したシステム)。

③上記三者でWEB会議を行う。会議内容は、裁判の争点を整理する非公開の手続。

この裁判では、争いの対象である土地の図面をモニター画面に映して、三者で共有しながら、協議したり、和解について裁判所から各代理人に意見を求めるというものです。

事前に接続テスト等を行っていたので、当日は一定のシナリオに沿ってスムーズに進行しました。
(こういった模擬裁判の内容については下記の日経新聞2020年1月9日の記事が参考になります。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54225810Z00C20A1CC1000/

こうした裁判WEB会議については、東京・大阪等の都市部の裁判所においては、実際の民事裁判において既に利用が始まっています。
(日経新聞2020年7月12日の記事https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61429210S0A710C2CE0000/)。

外国に比べて「歩みが遅い」と指摘されていた(各国それぞれ事情があるので単純に比較はできないのですが)日本の裁判手続のIT化もここにきて、加速してきているようです。
もともと司法手続のIT化は数年前より計画されていたのですが、上記の記事にもあるように、新型コロナ感染症拡大がIT化の速度を早める可能性があります。なぜなら、WEB会議(争点整理)においては、双方(原告、被告)の代理人ともに裁判所に出席しなくても手続きが進行するので、「感染症対策」にもなるためです。

そうすると、裁判がおこっている裁判所から遠く離れた事務所の代理人弁護士が裁判所に行かずに、事務所で会議に参加できるだけでなく、裁判所からそう離れていない代理人も毎回裁判所に出て行かなくてもよいということにもなりそうです。
現在、このWEB会議を使って、民事裁判のどんな手続でも進めることができるというわけではなくて、いわば「試行中」の状態です。しかし、一旦、IT化の方向に進みだした流れは止まることはなく、課題や問題点が発見されつつも、ますます進んでいくことと思います。

このようなIT化が進めば、裁判所に訴状を提出するという裁判のはじまりから、判決や和解といった裁判の終わりまで、全てWEB上、オンラインで進行するということも考えられます。私も、これまで遠方の裁判所に初回のみ出廷し、後は全て電話会議で和解(裁判終了)まで至るという経験もあり、それで事足りる事件もあるでしょう。

一方、実際に、裁判官や相手方代理人の顔をみて協議しなければ、つかみにくい「雰囲気」や「間合い」といったものもあるようにも思えます。

今後、IT技術が裁判や弁護士業務、依頼者の利益にとって、どういう影響をもたらすのか、実際に試行・修正していきながら検討、対応をしていく必要がありそうです。